お互いの名前が変わってしまった話



わたしは2011720日から2018817日までの約7年間、韓国のアイドルグループ「超新星」のファンをしていました。


ファンをしていた、という過去形で書いたのには理由があります。2018818日のファンミーティング"HOME"をもって、彼らは以前所属していた事務所を契約満了を迎えて新しいSVエンターテイメントを設立し、以前までの超新星という名前を使えなくなりました。そしてファンミーティングの場で発表された彼らの新しい名前、それが「SUPERNOVA」でした。


国で초신성(チョシンソン、超新星)としてデビューしてから11年、思い入れのある名前からあまり違和感のないように新しい名前として超新星の英語訳であるSUPERNOVAを選んでくれました。


ちなみに、ファンクラブの名前もMILKYWAYからMilkyへと変わりました。元々ライブでもSNSでも彼らはわたしたちのことを「ミルキー」と呼んでいたから、それこそ違和感はないけど時々前のようにMILKYWAYと呼んでしまう彼らを見るとやっぱり少し寂しいものでした。



でも、何よりいちばん寂しかったのは舞台に5人しか立っていなかったことでした。元超新星は6人組のグループです。今回参加できなかったソンモくんは、元々グループに合流するのがいちばん遅く、除隊もいちばん遅かったのでメンバーで唯一契約満了が8月末までだったそうです。それにメンバーたちも、事務所も、そしてソンモくん本人も気がついたのがすでにチケットの抽選が終わった頃で、結果としてソンモくんが参加できないことが直前の発表になってしまったみたい。


ただ、わたしは正直ソンモくんは契約満了を迎えたら5人に必ず合流するだろう、と呑気に考えていました。


ファンミーティングではユナクさんがいちメンバーとして手紙で気持ちを語り、そのあとは現実的な問題としての現状を冷静に全てリーダーとして語ってくれました。ユナクさんは結構よく泣く人だけど、今日の涙は明らかにその意味が今までとは違いました。


何周年という記念を無事迎えられた安心感、自分が入隊するときの不安、除隊した時の待ってくれていたファンへの感謝、弟たちが一気に入隊する不安。今回の涙はきっと"リーダーとしての役割を果たしきれなかった悔しさ"だったと思います。



そのまま契約を続けるのか、5人に合流するのか、それともソロとして独立するのか、ユナクさんは何度もソンモくんの意思を尊重すると繰り返していました。もちろん、一緒にやろう、と何度も声をかけていると言ってくれていました。


てっきり当たり前のようにソンモくんは合流するものだと思っていたから、ユナクさんが何度も説得しているということ、つまりソンモくんが渋っているのか、事務所からの何かがあるのか、細かい部分はわからないけど、思ったより難しい問題なんだと気がつきました。


状を言える部分だけでもわたしたちに言ったことで、ユナクさんは自分の心の負担が半分になったと言っていました。グループの再出発としてのファンミーティングに6人で会えなかったことがリーダーとして悔しい、と歯を食いしばりながら泣いたユナクさんの重圧はわたしには到底計り知れません。


練習生のときから約13年、すでに人生の半分近くを共に過ごしてきた彼らの中には、正直わたしたちが何を言おうと揺らぐことのないものがあると思います。でもそれは彼らもわたしたちも変わらないと思いたい。6人でいたい、と6人でいてほしい、が一致していてほしい。でも、それがユナクさんの負担にはなってほしくない。



4人が入隊中、ユナクさんと共にグループを守っていた次男、グループのセンターとして、メインボーカルとして、そして最年長でありリーダーのユナクさんと横並び卯年生まれの弟たちを繋ぐソンジェくん。


グループのリーダーとして、そしてこれからは事務所の代表としてさまざまな重圧に悩まされるであろうユナクさんにソンジェくんという存在がいて良かった。4人が入隊中の2年間、2人だけでやってきた彼らはわたしが思うより逞しいお兄ちゃんなんだと思う。


でも、しんみりとした空気を和ませるように明るく振舞いながら手紙を読んで、ユナクさんが泣いたら真っ先に抱きしめに行って、トロッコに乗ればニコニコと笑顔で手を振り続ける頼もしいその存在が、Stay with meでついに泣いてしまった。あの涙の意味は何なんだろうか。ソンモくんがいないことに対する悲しみなのか、それでも集まってくれたファンの存在を見ての安心なのか。大きな目に涙を潤ませたソンジェくんに寄り添った末っ子ゴニル。誰かが弱くなったら誰かがすぐ寄り添える彼らの姿に胸が熱くなりました。



オープニングから、日本でのシングル曲をデビューから順に歌うセトリ。ダンスナンバーでは完全に音源を流して、でもそれにマイクで自分たちの生歌も重ねてる形で進みました。だから、ソンモくんの声がずっと聴こえていて、なのに、ソンモくんの姿はどこにもなくて、それがとても悲しかったです。最初の方はソンモくんのパートを埋めるように他のメンバーが歌を割り振られてそこを歌っていたけど、途中から誰もマイクを握らず、音源のソンモくんの声だけが会場に流れました。


正直、メンバーの兵役で2年間その人に会えないのを6人分経験しているので悲しいことだけど待つのには慣れているし、いない人のパートを他のメンバーが歌っているのにも多少なりとも慣れています。


でも、ソンモくんの契約満了まであと数週間、きっと何らかの形でソンモくんはわたしたちに答えを伝えてくれると思います。たった数週間だけど、どうなるかわからないこの状況はその2年間よりもっとずっと辛いです。



結局ここでもわたしは当たり前とか、永遠とか、絶対とか、そんなものが存在しないことを知ることになりました。もちろん今後のことに不安は残るけれど、名前が変わっても、彼ら自身も、彼らとわたしたちの関係が変わらないことを再確認してこれから先も応援しようという気持ちが固まりました。どうか、全員が笑顔でいられる選択が出来る世界でありますように。



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